先行プレイ会に参加してきました

 タイトルの通り、渋谷ヒカリエにて行われたデュエルエクスマキナの先行プレイ会に参加してきました。同じく先行プレイ会に参加された方は「sokomadeja」なんて人いなかったけど…と思うかもしれませんが、別名義での参加です。中の人が誰かは秘密です。

 そんなわけで先行プレイ会に参加して思ったことをいくつかまとめてみます。

 

 開発スタッフの方々は信頼できる 

クリエイターレター Vol.1 | 【公式】デュエルエクスマキナ(DUELS X MACHINA)最速攻略wiki

 以前公開されたクリエイターレターを見てもわかるように、このゲームの開発スタッフの方々はユーザーと積極的にコミュニケーションを取り、声を聞いていこうという姿勢を見せてくれています。

 その印象は今回実際に開発スタッフの方々と顔を合わせて話を聞いてみて、覆されることなくむしろ強まりました。

 なんらかのカードゲームを長く遊んでいる方にはわかると思いますが、カードゲームのバランス調整というのは非常に難しく、どこかで必ずなんらかのやらかしをしてしまうものです。長期間続いていて大きな失敗をしていないカードゲームタイトルは存在しないと言ってしまっていいほどです。

 特にDeNA社はこれまでカードゲーム開発の経験がなく、開発は手探り状態でしょう。ですので、私としてはユーザーの目に触れる前の段階で完成度の高い調整がなされることに対してはあまり期待していないというのが正直なところです。実際、上記のクリエイターレターを読めばわかるようにOBTでのゲームバランスには大きな欠陥がありました。

 しかし、デュエルエクスマキナはデジタルカードゲームです。アナログカードゲームはリリース後にカードスキルを変更するということはほぼ不可能に近いですし、強いカードは高額で取引されるため禁止カードを出すことはユーザーに高い負担を強いることになってしまいます。一方デジタルカードゲームの場合、カードのNerf(弱体調整)に際してそのカードを所持していたユーザーに対してその損害の補填をすることは容易であり、運営が事後的に調整を加えるハードルはそう高くありません。

 ですので、初期段階でのバランスの悪さというのは短期的な問題にすぎないとみなすことができます。問題は、ユーザーにとって楽しくない状況がきちんと改善されるかなのです。

 その点、今開発スタッフの方々が見せてくれているユーザーの声を聞こうという姿勢は、もしもゲームが楽しいものでなくなってしまうことがあったとしてもどうせすぐに直るだろうという安心感を我々に与えてくれるものだと思っています。

 もちろん、ユーザーの声を聞けば良いゲームになるというものではありません。ユーザーは感情でモノを言うものですし、楽しんでいるユーザーの声よりも不満を持っているユーザーの声のほうが大きなものに見えがちであるという問題もあります。そして往々にしてユーザーの提示するアイデアはごく一部の問題にのみ視点がいきすぎて別の問題を引き起こすような使えないものであることが多いです。

 しかし、ユーザーの声を聞くことが多くの人が何に不満を抱いているのか、何がゲームの楽しさを損ねているのかを把握するための重要な手段であることは間違いありません。

 そしてなによりも、ユーザーの立場からすると、あなたたちの声を聞きますよ、ひとりよがりになりませんよ、ユーザー目線に立ちますよ、という姿勢を見せてくれること自体が開発運営に対する信頼感の源なのです。

 また、実際に会ってみた開発スタッフの方々は皆我々と同じゲームが大好きな人間で、一緒に楽しもうという空気が非常によく感じられたということを付け加えておきます。

 

 

先手後手、勢力間のバランスは極めて大きく改善されていた

 第2次OBTをやっていた頃なので書いたのはもうだいぶ前になりますが、以前のエントリで「このゲームはマナの総量で後手が先手を上回れるタイミングが一切存在しないことが過剰な先手有利を引き起こしている」という旨のことを書きました。

 今回発表された一時的なマナブーストスペル「恩恵のマナ」を後手に与えるという変更はまさに私の指摘していた問題に対するダイレクトな解答となっており、実際にルール変更後のゲームを遊んでみる前からかなりのバランスの改善を予想していました。

 そして実際にルール変更後のゲームを遊んでみての感想ですが、予想通り先手後手のバランスはほとんど気にならないものになっていると感じました。

 もちろんプレイ会で遊べたゲーム数はわずか数ゲームに過ぎず、ゲームバランスについてはっきりしたことが言えるほどのものではありません。ですのであくまで少ないゲーム体験の中での感覚的な意見ではありますが、ひとまず先手のほうが強い、後手のほうが強いというような感覚はありませんでした。

 参加者の中からは「後手のほうが欲しい」という声も聞こえましたが、特に根拠のない個人的な予想としてはこのルールだと先手がほんの若干有利で勝率52~3%くらいになるのではないかなと思ってます。

 

 また、勢力間のバランスについても、オリンポスの速攻を付与するタイプのカードやバフカードなどが細かくNerfされている一方で、他のクラスには使い勝手のいい除去が追加されており、こちらも大幅にバランスが改善されていると感じました。

 おそらく先手後手のバランスの改善もオリンポスが強すぎた状況の改善に繋がったのではないかとも思っています。

 以前のルールでは先手が極めて大きなテンポアドバンテージを持っていました。そして、テンポアドバンテージを特に勝利に結びつけやすいのがオリンポスのようなアグロデッキです。ゲームが早いターンで終わるほど先にターンが回ってくる、先にマナを使えるという優位の比率が大きなものになりますから。

 OBTの段階でオリンポスに有利な“はずの”デッキは存在しました。そしてそのようなデッキは実際に先手を取れればオリンポスに対して有利に戦うことができていました。しかし逆にオリンポスに先手を取られてしまった場合、対処が間に合わずに押し切られてしまうことが多かったのです。

 しかし後手にテンポ上の補正がかかったことにより、後手からでもアグロに対して対処が間に合うようになり、オリンポスの「先手取ったら最強」という強みが消え、結果として勢力間のバランスが改善したのではないかと思います。

 

 

 

一方懸念点は?

 いい話だけして終わるというのもナンなので、最後に懸念点について書きます。

 完全にすべてのカード変更をチェックできたわけではありませんが、変更の加えられたカードを見てみると、ごく一部Buff調整があるものの全体的にはNerf調整が多いという印象を受けました。これ自体は一概に悪いことではありません。

 しかし、ゲームバランスの向上に注意が向きすぎるあまり角の取れたゲームになってしまい面白みが薄れてしまう危険性もまた感じてしまいます。

 バランスの良いゲームはイコール面白いゲームではありません。バランスの悪さというのは例えるならバグのようなものです。バグが多いゲームは遊んでいてフラストレーションが溜まりつまらないですよね。しかし、バグがないからこのゲーム面白い!とはなりません。バグはただ多いほど減点が大きくなるだけで、加点には繋がらないのです。

 ゲームバランスについても同じことが言えます。バランスの悪さはゲームの面白さを損ねますが、バランスが完璧でもそれでゲームが面白くなるわけではありません。ただ、バランスがいいとゲーム本来の面白さが損なわれることなく届くというだけです。

 ではカードゲームの面白みを高めるためには何が必要なのでしょうか?

 私は「ユーザーに小さな成功体験を積み重ねさせること」ではないかと思っています。

 例えばある2枚のカードの相性が良いことを発見し、実際に使ってみて上手く噛みあい思った通りの強いアクションができた、であるとか、HPが高くてなかなか倒せない強いユニットのことを意識してデッキに確定除去を入れ、見事にそのユニットを倒すことができた、であるとか、そういうことです。

 そういった思い通りに上手くいく体験ができると非常に嬉しいものですし、やりたいことができたゲームは結果として負けてしまってもプラスの感情を残すことができます。

 そういった視点から、OBTでは1マナだった勢力地形を作るキャントリップスペルが2マナにNerfされてしまっていたことは残念に感じました。地形を作り、その地形を利用して強いことをするというのはまさに小さな成功体験に他ならないからです。

 確かに地形を作るキャントリップは1マナにしては効率的すぎるカードであることは間違いありません。あのカードが存在することによって今後の地形利用カードに強いものを作りにくくなるのも確かです。バランス上妥当なコストは1ではないでしょう。

 しかし、その上であえて1マナのままにしてほしかったというのが正直な気持ちです。地形利用は他の類似ゲームにない独自の要素であり、遊んでいて楽しい要素でもあります。ですので、その楽しさのためにあえてオーバーパワーを許容してほしかった。

 一方的にゲームを決めてしまうような楽しさを損ねるオーバーパワーについては厳しくNerfするのが妥当かと思います。しかし一方で、独特で楽しい動きを実現させるためにあえてオーバーパワーを許容する判断もあっていいのではないかと思っています。

 多少角があるほうが、むしろ面白いのです(もちろん過剰なものはNGですが)。