【DQR】新作DCGドラゴンクエストライバルズレビュー

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 新作デジタルカードゲーム、ドラゴンクエストライバルズが配信開始されてから数日経ちました。私も遊んでます。配信開始当初は通信が不安定でCPU戦すらまともに遊べなかったりもしましたが、何度かのメンテナンスを経て今は安定して遊べる状況になっていますね。

 もともとこのブログはデュエルエクスマキナについて書く目的で始めたのですが、せっかくの新作ビッグタイトルですし、同じく6マスにユニットを配置するカードゲームですし、ドラクエライバルズについても触れていこうと思います。

 というわけで、今回のエントリは数日間ドラクエライバルズを遊んでみて感じた良い点、悪い点のレビューです。ちなみに闘技場を5回、ランクマッチを瞬間レジェ1位になるまで遊んでの感想になります。

 

 

 

良い点

 

ドラクエであること

 いきなり根本の話になりますが、このゲームについて語る上でこの点だけは外すことができません。

 そう、ドラクエなんですよ。

 ドラクエシリーズの登場人物やモンスター達がプレイヤーキャラクターやカードとして登場し、ゲーム中は歴代ドラクエのBGMが流れ続ける。これまでの人生でドラクエを何タイトルも遊んできて思い入れのある人間からすると、これだけでもう楽しい。

 ハースストーンのヒット以降後追いのDCGタイトルが国内だけでもいくつかリリースされていますが、このドラクエであるということは他のタイトルとの明確な差別化となる最大の要素です。ドラクエであるがゆえのコミカルで明るく楽天的な雰囲気も他のタイトルと全く異なるものに感じられます。

 カードスキルのデザインもドラクエファンがニヤリとできるものになっています。パパスが死ぬと「ぬわーーーー」と叫びながらパパスの剣を遺す(しかもさほど強くない)、竜王を倒すと真の姿を現す、ゾーマは光の玉を使わない限り無敵、などなどドラクエシリーズの印象的だった場面が思い起こされるようなカードがいくつも用意されています。

 また、音楽の良さというのも非常に大きい。これはドラクエに対する思い入れというところを抜きにしても良い点です。自分はゲームを長時間遊び続けるのはあまり得意でないタイプなのですが、ドラクエライバルズは気付いたら何時間も遊び続けてしまっています。この手の対戦ゲームは何回も何回も繰り返し対戦をすることになるのですが、そこでずっと同じような音楽が流れ続けるため音楽への飽きがゲームの飽きへと直結してしまい長時間遊び続けるのがしんどくなりがちです。その点、ドラクエの音楽はすぎやまこういち先生が「ゲーム音楽は聴き減りしないものでなくてはならない」と言っているように長時間聞き続けても飽きが来にくい。それどころかこの音楽が流れる空間が心地よいからずっとこうしていたいという気分にさせてくれる。そのため、延々ランクマで対戦を繰り返すというある種不毛とも言えることでも長時間続けることができます。

 

リッチな演出

 このゲーム、なんと全ユニットに3Dモデルが用意されています。しかも当然動く。そして全スペルには詠唱ボイスとエフェクトが用意されています。後述するテンポ感という観点からするとこれは必ずしも良いことばかりではありませんが、とはいえこのことがゲームをしていて楽しいと感じられる大きな要素のひとつであることは確かです。無言で火球がプレイヤーに飛んでゲームが終わるよりも「メラゾーマ!」と叫びながらのほうが明らかに楽しいですよね。

 

多くのプレイヤー人口が見込める

 ゲームの魅力にとって実は面白さ以上に遊んでいる人の数というのが大事なのではないかとも思っています。対戦ゲームであれば特に。

 多くの人が遊ぶ人気ゲームの盛り上がりに乗るというのはそれだけで面白さにボーナスが付きますし、人口の少ないゲームで上位に入ってもお山の大将感が否めませんが人口の多いゲームで上位に入ればなんとなくステータスを得た気分になることができます。

 この話を進めると過疎地は過疎地ゆえに人が離れていき都会は都会ゆえに人が集まってくるみたいな世知辛く身も蓋もない話になっていきそうなので深掘りはしないでおきます。

 

テンションルールが面白い

 テンションを溜めてテンションスキルを使うことができるというドラクエライバルズ独自のルールですが、自分は最初これを単なるハースストーンのヒーローパワーのアレンジくらいにしか考えていませんでした。実際、ゲームデザイン上の発想としてはハースストーンのヒーローパワーのアレンジとして作られたものでしょう。

 しかし、ゲームを理解するにつれてテンションを使いこなすにはヒーローパワーを使うのとは異なるスキルが要求されており、かなりの奥深さを持つものだということがわかってきました。

 ヒーローパワーは使うのに2マナが必要ですが、効果をマナに換算すると1マナにも満たない弱い行動しか取ることができません。そのため、基本的にはマナが余ったときや手札を使うのとほぼ同じかそれ以上の働きができるときにしか使わず、使うべきタイミングは比較的わかりやすいものとなっています。大体の場合はヒーローパワーを使うよりも手札を使った方がテンポ的に大きく得ですからね。

 一方でテンションスキルは分割支払いしかできないという縛りこそあるものの、計3MP支払って得られる効果は2MP相当です。ヒーローパワーが支払ったマナに対して半分以下の効果しか得られないのに対してテンションは支払ったMPの3分の2の効果が得られるわけで、これはかなり効率的で強いものだと言えます。

 つまり、テンションは溜める価値が高いのです。

 ヒーローパワーを使うべきか手札を使うべきかの選択はだいたい後者が正解でさほど悩ましくありません。一方でテンションを溜めるべきか手札を使うべきかの選択は後者が正解の場面が非常に多く、かなり悩ましいものとなっているのです。

 1ターンにひとつずつの分割払いしかできないというのもまた曲者で、テンションを溜めるのを怠ったばかりに必要なときにテンションスキルを使うことができないということにもなりがちです。ヒーローパワーを使うべきかの判断はこのターン中だけを見て判断してもそこまで問題ないのですが、テンションを溜めるべきかは数ターン先のことまで視野に入れないとなかなか正しく判断できないところがあります。

 

闘技場の扉が面白い

 まず、リリース時点からこういったカード資産を要求しない遊びが実装されているという点が高評価です。シャドウバースにしろデュエルエクスマキナにしろリリースには間に合わず後からの実装になってしまっていましたからね。無課金者でも課金者との格差を感じずに遊べて資産稼ぎも狙えるモードはやはり全員が初心者のサービス開始時点にこそ欲しいものです。

 そして、ドラクエライバルズの闘技場における独自ルールである扉の間ですが、これが面白い。

 例えばハースストーンのアリーナだとピックの選択肢に出てきたカードが全て弱くてげんなりするということがままあります。しかし、ドラクエライバルズの闘技場だとどの扉を選択するかで自分が欲しいタイプのカードを出やすくすることができるのです。そしてこれが大事なのですが、もしも選択肢にゴミ3枚が出てきてしまっても、選んだ扉を間違えたというふうに自分のミスと考えることができるため、理不尽な不運に見舞われたというストレスを感じづらくなっているのです。

 それと、これは自分語りになるんですが、私が初めて遊んだドラクエタイトルはテリーのワンダーランドでした。なんでこの旅の扉に入るという設定からあの日のワクワク感が思い出されてすごく楽しい気持ちになるんですよね。

 もっともこの扉の間もいい点ばかりではなく、選んだ扉によっては同じカードばかり連続で出てきてうんざりすることがあります。まだカードプールが狭いのである程度仕方ないのですが。

 

 

 

悪い点

 

イマイチなUI

 そもそもの話、画面内でプレイヤーキャラクターが横向きに向き合っているバトル画面からして直感的ではないです。自分のプレイヤーキャラクターが手前にいて奥の敵に向かって攻撃するバトル画面の場合、スマホを操作している自分自身と画面内のプレイヤーキャラクターの視線が同じ方向を向き直感的ですが、このゲームの場合そうなってはいません。

 そしてこのことがカードテキストのわかりにくさにも繋がっています。「縦一列の全ユニットに3ダメージ」というカードを見て初見でこの縦一列というのが画面の前にいる自分自身から見ての縦なのか画面内左にいるプレイヤーキャラクターから見ての縦なのかはっきりとわかる人はいないでしょう。

 ターン終了ボタンも右端にあるゲームの場合右利きの人が操作を終えて手を引っ込める動作の中で自然に押すことができるのに対しこのゲームの場合画面の上のほうに設置されているため不自然な手の動きを要求されます。

 他にも現在使えるMP数の視認性が悪かったり、召喚時の効果で場のユニットを選択しようとしたときに召喚しようとしているカードがマスにかかっているために誤タッチでイライラしたりと、「微妙に配慮が行き届いていない感じ」がこのゲームには溢れています。

 

良いとは言い難いテンポ感

 何かするたびに毎回エフェクトが入るのは楽しさを生んでいる要素でもあるのですが、同時にテンポ感を損ねている要素でもあります。個人的にはカードを使ったときやユニットで攻撃したときのエフェクトは気にならないのですが、誘発効果のエフェクトはややもっさりしていると感じています。

 そして、ブロックやウォールが成立したときにいちいち表示が出るのはかなり鬱陶しく感じます。これは明確にやめてほしい。

 また、カードを引くときのエフェクトのスピードを見ると違いが顕著だと思いますが、シャドウバースがかなりゲームのテンポ感が早いゲームなので、シャドウバースに慣れたプレイヤーからするとドラクエライバルズのテンポ感は遅く感じられるのではないかと思います。シャドウバースを一切触ってない人ならそこまで気にならないのではないかという気もしますが。

 

課金し甲斐の薄さ

 自分はランクマッチでレジェンドランクに到達するまで無課金で組んだアグロゼシカを使っていたのですが、レジェに上がってから連敗して他のデッキを使ってみたくなったというのと、自分のレジェ到達記念及びサービス開始のご祝儀ということで1万円課金しました。

 その結果どうなったか。課金の甲斐ありレジェンドカードを3枚作れるだけの錬金石を手に入れました。よし、これでゾーマやりゅうおうを作れるぞ! ピサロククールのデッキを作ろう!

 

…作れませんでした。

 

 ランプピサロやコントロールククールには5~6枚のレジェンドカードが必要です。しかし手元にはレジェ3枚分の錬金石しかないのです。

 ランプピサロやコントロールククールは序盤を耐えて終盤パワーカードを叩きつけて勝つデッキです。叩きつけるべきパワーカードが充分な枚数デッキに入っていなければデッキとして成立しません。妥協した構築は不可能です。

 ではこのレジェ3枚分で組める別のちょうどいいデッキはないでしょうか?

 ありません。

 環境で存在感を放つ上位デッキはアグロゼシカ、バーンゼシカ、ランプピサロ、コントロールククールの4つです。このうちゼシカ2つは無課金で組むことができます。そしてピサロククールは上記のようにレジェ3枚では組めません。他の職のデッキを模索しても結局アグロゼシカが一定以上の存在感を放つ以上耐えてレジェ連打の構築に行き着いてしまいます。

 なんと、現在のドラクエライバルズの環境には無課金デッキと廃課金デッキの2種類しか存在せず、1万課金したらちょうど組めるくらいのデッキは存在しなかったのです…。

 そして私は再びアグロゼシカを手に取りランクマを回すことにしたのです。ずっとやってたら瞬間1位を取れましたよ。嬉しいな。

 

疑問のある先後バランス

 自分はドラクエライバルズの先攻後攻のバランスは悪いというふうに感じています。ただし、単純に先攻が強すぎるとか後攻が強すぎるとかそういうことではありません。

 この説明をするにあたり、まずテンションについて再定義を行います。

 

 テンションとはつまり「2回溜めると次のターン手札に1コストのスペルが加わる」というものです。

 

 まあ、3回目を溜めると次のターン以降その1コストスペルを0コストで使えるようになるというのもあるんですが、ここではそれは重要ではないです。

 重要なのは「テンションが2回溜まっている状況=手札にカードがある状況」とみなせるということです。

 

 この認識のもと先攻後攻バランスを見てみると、例えばゼシカの場合、先攻だったら手札3枚でゲームスタートとなります。そして後攻だと通常手札4枚と1コストのメラミの計5枚でゲームスタートとなります。

 

 …なんだか後攻の手札、多すぎませんか?

 

 ハースストーンとの比較で考えてみましょう。

 ハースストーンは先攻が手札3枚、後攻が通常手札4枚と1マナ増やすスペルであるコインの計5枚でゲームスタートとなります。

 こちらも一見後攻の手札が多すぎるように見えますが、コインはマナを出すことしかできずリソースとしてカウントできないものなので実はそんなことありません。

 そして、ソースがどこだったのかは忘れましたがハースストーンの先後の勝率は先攻勝率が52~3%と若干先手有利なものの極端に気になるほどではないものらしいです。実際、ハースストーンは遊んでいてほとんど先後バランスに違和感を覚えません。

 このハースストーン、特にアリーナでの後攻のベストな動きのひとつは1ターン目にコインから2マナミニオンを出し2ターン目に普通に2マナミニオンを出すというものです。1ターン目3/2、2ターン目3/2という具合に動けたらかなりのいい動きというわけですね。この動きをした場合、コインを除く通常の手札が初手4枚、ドローが2枚、使った手札が2枚となるので手札が4枚残ることになります。

 

 これと同じ動きをドラクエライバルズのピサロでやってみましょう。

 ピサロの場合後攻1ターン目はテンションスキルで3/2を出すことができるのであとは2ターン目に手札の3/2を着地させるだけですね。

 初手が4枚、ドローが2枚、使った手札が1枚となるので、この動きをした場合に残る手札は5枚です。

 

 …なんだか手札多くないですか?

 

 ハースストーンは先攻勝率が52~3%でした。もしも後攻に余分に手札1枚を渡した場合、下がる先攻勝率は2~3%で済むのでしょうか?

 

 さて、ここまで書いた感じだとドラクエライバルズでは後攻が強すぎるように思えるかもしれません。でも一概にそうは言えないんです。

 

 ゼシカピサロの場合、わかりやすく2コスト相当のことをテンションスキルで1コストで行うことができます。ここで1MP分の得がある。だから後攻からでも完全にテンポ負けしてしまうことなくゲームすることができます。

 ではミネアやアリーナの場合はどうか。これらの職はテンションスキルを使っても手札になるだけで盤面のテンポ負けに影響を与えることができません。つまり、手札はたくさんあるけれど使い切れずに押し切られてしまうということになりがちなんです。

 例えるなら、後攻にコインの代わりに通常カードを与えたハースストーンみたいなバランスということです。

 もしもハースストーンにコインがなく先手の初手が3枚、後手の初手が5枚というバランスだったらどうなるでしょうか。

 一概にどちらが有利とは言えません。テンポが重要なゲームになった場合、後手にテンポ上の補正が全くないため先攻が超有利です。一方でお互いにカードの交換を繰り返しロングゲームになった場合、後攻のほうが2枚分という覆しがたいアドバンテージをもつため超有利です。

 こういうゲームバランスだとどうなるのかというと、マッチアップと先攻後攻が決まった瞬間にだいたいゲームの行方がわかるようになります。

 要するにリソース勝負になるマッチアップだったら先攻だった瞬間ほぼ負け、相手がアグロだったら後攻だった瞬間ほぼ負け、ということです。

 仮にそれによって全体の先後勝率が五分五分になったとしても、私はそれがまともに成立しているゲームだとは思えません。

 

 まあ、ここで出している例は極端だとしても、私はドラクエライバルズのゲームバランスがそういったものに限りなく接近するリスクを孕んだものだと考えています。

 実際、私は既にミネアは後攻のときに辛すぎるから使いたくないと感じていますし、アグロゼシカの同系戦は後攻が過剰に有利だと感じています。

 

 テンションスキルが盤面のテンポに影響できるものか否かで後攻のときの戦いやすさの格差がものすごいんですよね。影響できる職だと後攻のときかなり有利にゲームを運べてしまうし、影響できない職だと後攻は本当に辛い。

 この、後攻にテンション2つ分を与えることによって先後のバランスを取ろうとしている部分に職業格差と先後格差の両方の問題が絡み合ってゲームバランス上の大きなリスクになってしまっていると、私はそういうふうに考えています。

 

 

 

 

総評

 悪いと思う部分も色々と書きましたが、全体としては私はこのゲームを非常に気に入っています。ドラクエもカードゲームもどちらも大好きなので、もう企画の時点で気に入るに決まってるなこれという感じがあります。

 まあ、ゲームバランス的にこれどうなの? ということを書きはしたものの、正直ゲームの面白さはゲームバランスでもたらされるというよりもやっていて楽しいと感じられる雰囲気があるか否かというところのほうが遥かに大きいですし。

 ドラクエとカードゲームの両方が好きな人なら必ず遊ぶべきだと太鼓判を押せるゲームです!